不倫慰謝料の求償権について
1 不倫慰謝料請求で求償権行使が起こる場面
求償権は、不倫の加害者(通常、不倫をした配偶者と不倫相手)のうちの1人が、自身の負担割合を超えて不倫慰謝料を支払った場合に、もう一方の加害者に対して行使されるものです。
不倫をされた側の配偶者は、法律上不倫をした配偶者と不倫相手のどちらに対しても、不倫慰謝料全額の支払いを請求することができます。
一方、不倫をした配偶者と不倫相手との間では、不倫慰謝料の負担割合が存在します。
一般的には負担割合は50%ずつとなりますが、どちらかがこの負担割合を超えて慰謝料を支払った場合、その超えた部分をもう一人の加害者に請求することができます。
この請求権を求償権といいます。
以下、求償権の法的な性質、および不倫慰謝料請求における求償権行使の例について説明します。
2 求償権の法的な性質
不倫をした配偶者と不倫相手が不倫慰謝料を支払う義務は、専門的には不真正連帯債務者と呼ばれます。
両者は連帯して、不倫をされた側の配偶者に不倫慰謝料を支払う義務を負います。
不倫をされた配偶者の側から見ると、不倫をした配偶者と不倫相手のどちらに対しても、不倫慰謝料全額を請求できるということになります。
なお、不貞行為によって発生した不倫慰謝料の総額は決まっているため、不倫配偶者と不倫相手から支払われた金額の合計額が不倫慰謝料の金額に達すると、それ以上の請求はできなくなります(二重請求はできない)。
実務においては、不倫相手にのみ不倫慰謝料全額の請求がなされるということもあります。
ただし、不倫をした配偶者と不倫相手との間においては、不倫慰謝料の負担割合があります。
一般的には、不倫をした配偶者と不倫相手との負担割合は50%ずつされることが多いです。
不倫相手が不倫慰謝料の全額を支払った場合、求償権を行使し、不倫慰謝料の50%にあたる金額を不倫配偶者に請求することができるようになります。
3 不倫慰謝料請求における求償権行使の例
不倫慰謝料の金額が100万円、不倫をした配偶者と不倫相手と間での不倫慰謝料の負担割合が50%ずつというケースを想定してみます。
不倫相手が不倫慰謝料の全額を支払うと、不倫相手から不倫をした配偶者に対する求償権行使が可能となり、50万円を請求することができます。