「不倫がバレてしまった…」謝罪文は書くべき?

文責:弁護士 小島隆太郎

最終更新日:2025年01月10日

 不倫がバレると、今後の夫婦関係の他、損害賠償請求が心配になるのではないでしょうか?

「不倫が相手の妻・夫にバレてしまい、なんとか損害賠償を回避したい。謝罪文は書いた方がいいのかな…」など悩んでしまう方も多いでしょう。

 実際のところ、謝罪文を条件に損害賠償額を減額に応じてもらえたり、謝罪文で相手の気持ちをなだめることに成功したりするケースもあります。
 しかし、場合によっては書かない方が良いケースもあるのです。

 そこで今回は、不倫がばれた際の謝罪文の効果、書き方、注意点をわかりやすくご説明します。

1 不倫の謝罪文

 まずは、不倫の謝罪文とはどのようなものか、どのような効果があるのかを見ていきましょう。

⑴ 不倫の謝罪文とは

 不倫における謝罪文とは、不倫があった事実を認め、被害者(不貞相手の配偶者や自身の配偶者)に対し、謝罪の気持ちを文章で表現するものです

 不倫がバレて、被害者に責め立てられたり、損害賠償を請求されたりした場合に作成するものとなりますが、実は示談の際に必ず必要になるものではありません。
 あくまで不倫行為に関わった者として、誠意を持って謝罪を行うというのが目的となります。

 不倫を行ってしまったことに対して、あなた自身がその事実を認めており、真摯に反省している場合は、被害者に対し反省の意を見せるために書くことを検討してみてください。

 謝罪文は、不倫をした相手の配偶者に対して書くことが多いのですが、自身の配偶者に対して書くこともあります。

 同じく、不倫問題のときに出される文書として「誓約書」というものもありますが、これは全く別物です。
 これは、「二度と会わない・不倫関係を継続しない」といったことなどを約束する文書であり、不倫後に被害者が夫婦関係を継続する場合に効果的な文書となります。

⑵ 不倫における謝罪文の効果

 では、謝罪文を作成し相手に届けることにはどのような効果があるのでしょうか。

 謝罪文の効果としては、以下のようなものがあります。

・被害者である妻・夫の気持ちをなだめる

・謝罪を条件に慰謝料を減額・免除してもらう

・不倫トラブルの早期解決

・不倫の証拠として利用できる

 被害者は、不倫行為があったことに対し怒りと悲しみを覚えています。謝罪の言葉があれば、ある程度ショックを和らげることができるという効果があります。

 もっとも、人によっては「謝罪されても許せない」という方もいますので、あくまで相手に誠意を見せる1つの手段と考えるべきかもしれません。

 また、「お金よりも気持ちで表してほしい」と考える被害者に対しては、謝罪を条件に慰謝料の減額や免除を引き出せることがあります。
 それほど多くはないケースですが、謝罪だけで不倫問題が解決するなら早期収束につながるといえるでしょう。

 最後に、不倫当事者にとっては困る内容ですが、謝罪文が不倫の証拠として利用されることがあります。
 損害賠償額などで折り合いがつかなかった場合に裁判に持ち込む際の証拠として利用されます。

 このように、謝罪文には様々な効果があります。必ず書く必要はありませんが、メリットが享受できる場合もあります。

2 謝罪文の書き方(定型文)

⑴ 謝罪文に書くべき内容

 いざ「謝罪文を書こう」と思っても、実際に何を書くべきなのか迷ってしまいます。
 そこで、まずは謝罪文に書くべき内容をお伝えいたします。

 まず、謝罪文に定型のルールといったものは基本的にありません。書式も自由ですが、最低限以下の内容は書くようにしましょう。

 

不倫の謝罪文に必要な内容とルール

・直筆

・白の便箋

・作成日、住所、氏名、押印

・不倫の事実を認める(当事者名、期間、場所など)

・謝罪の言葉

 

 まず様式ですが、誠意が伝わるよう、直筆で白の便箋を選ぶようにしましょう。
 また、謝罪文を書いたことをきちっと文書として証拠に残すため、最後に作成日、住所、氏名を書いた上で押印をします。

 次に内容ですが、不倫の事実はしっかりと認めてください。いつ・どれくらいの期間、どこで・誰と・不倫関係にあったのかを認めます。
 その上で、謝罪の言葉を述べ、ご自身の気持ちを文書で表現してください。

「相手が悪い」など、言い訳を書くことはやめましょう。相手の気持ちを逆なでするだけで謝罪文の程をなしません。
 素直に、自分がしたことを認めて謝罪してください。

 定型文よりも、しっかりと自分の言葉で表現する方が、相手に伝わりやすいでしょう。

⑵ 謝罪文の例

 さて、書くべき内容はわかっても、どんな内容にすべきか困り果ててしまうこともあるでしょう。
 そこで、謝罪文の例文を記載しておきます。

 先述の通り、しっかりと自分の言葉で表現することが大切ですが、どうしても悩んでしまうという方は参考にしてください。

 

謝罪文

◯◯◯◯様

私(氏名)は、平成29年△△月△△日から平成31年△△月△△日まで、××××さんと5回程度東京都内のホテルにて肉体関係を持ったことを認め謝罪します。既婚者と知りながらも関係を持ってしまったことを深く反省しております。

今後は××××さんと電話やメールなど、方法を問わず一切の連絡と断ち、私的接触は行なわないとお約束いたします。今後二度とこのようなことはいたしません。

◯◯◯◯様を傷つけてしまったこと、家庭に悪影響を及ぼしてしまったことに対し、誠意を持って謝罪いたします。

令和元年5月13日
住所 ◯◯◯◯
氏名 ◯◯◯◯ 印

 

 こちらはあくまで例文です。全く同じ文章にするのではなく、自分なりに考えた文章で謝罪の気持ちを表現するようにしましょう。

3 謝罪文作成の注意点

 最後に、謝罪文作成の際の注意点をご説明します。
 謝罪文を書かない方がいいケースについても記載いたします

⑴ 作成時の注意点

 謝罪文を作成する際に、気をつけるべきことはあるのでしょうか?

 先にお話ししたように、謝罪文は相手にとって不倫の事実を認める証拠となりえます。
 そのため、不注意にも書くべきでない内容を書いてしまった場合には、その後ご自身にとって不利な事実として扱われてしまう可能性があります

 謝罪文作成時には以下の注意点を参考にしてください。

 

・挑発するような内容は書かない

・嘘や事実に基づかないことは書かない

・後から撤回することはできない

・金額に関することは書かない

・謝罪文だけ先に送らない

 

 まず、不倫の事実を書く際、不倫行為の内容を事細かに書くのは控えましょう。

 相手の想像を掻き立てるような内容を書くと、気持ちを逆なでしてしまい、謝罪どころか挑発と受け取られかねません。
「好きだと言われた」「離婚すると言っていた」など相手にとって不愉快な情報は明かさないようにしてください。

 また、あやふやな内容を書いたり、嘘や虚偽の事実を書いたりすることは控えましょう。

「お金が出来たら支払うつもりです」など、確定的ではないことを書けば、自分にとって不利に働きます。

 謝罪文に書いた内容は、相手に届いたら最後、撤回することはできません。

 慎重に言葉を選ぶようにしてください。

 さらに「100万円支払う」なども、示談として確約した段階ではないのに書くのは不適切です。

 最後に、送付する時期ですが、ある程度示談がまとまった段階で出すようにしてください。
 未確定な段階で「とにかく謝りたい」気持ちから出してしまうと、後々後悔することがあります。

 謝罪文は、示談ではありません。

 謝罪文だけですべての問題が解決するだけではないということを頭に入れておいてください。

⑵ 謝罪文作成を控えるべきケース

 では、謝罪文を出さない方が良いケースはあるのでしょうか?

 謝罪文はどんなケースでも万能というわけではありません。

 先にお伝えした内容や注意点をクリアできる場合に初めて、有効な謝罪として成立します。

 もっとも、そもそも謝罪文を出さない方が良いケースがあるのも事実です。

 具体的には、以下のようなケースに当てはまる場合は、謝罪文の作成を控えるようにしてください。

 

・相手が主張する内容に誤りがある場合

・相手に証拠があるかわからない場合

・慰謝料支払いだけを主張している場

 

 相手が主張する不倫の内容に誤りがある場合、あるいは不倫行為自体がない(肉体関係がない)場合には、不用意に謝ってしまうのは危険です。

 例えば、相手は完全に自由意志で不倫関係を結んだと考えている場合でも、実際は上司に肉体関係を迫られ断れなかったケースがあります。

 このような場合は、職場の立場を利用したセクハラ、準強制性交等罪となる可能性もあるため、不倫慰謝料を支払わなくてよいことがあります。

 相手が主張する事実がない・誤りがある場合には謝罪文作成は控えましょう。

 また、主張する事実はあるものの、相手に証拠があるわけではない、あるいはまだ何も請求されていない場合には、こちらから謝罪文を出し不倫行為を認める必要はありません。
 謝罪文で事実を認めることがご自身にとって不利に働く場合がありますので、この場合は弁護士に相談しましょう。

 さらに、慰謝料支払いだけを要求している場合は、謝罪文は必要ないケースもあります。

「謝罪されても困る・許せない」という方も多いため、慰謝料のみ請求してくることがあります。

 謝罪文を出した方がいいかは、相手の気持ちに寄り添って考えるべきでしょう。

4 謝罪文を書くべきか迷ったら弁護士に相談を

 相手に謝罪の意を表明したいけれど、書くことで余計に不利な立場にならないか不安になる方も多いことでしょう。
 書くべきか、書くべきでないか迷ったら、弁護士にご相談ください。

 謝罪文の必要性から書き方まで、弁護士がしっかりとアドバイスいたします。

 既に損害賠償請求が行われている場合は、謝罪文の与える影響をしっかり考慮してどのように対処すべきか慎重に考える必要があります。

 謝罪文の受け渡しや示談交渉は、当法人の弁護士にお任せください。

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